JUSTWIT
000
← ブログ一覧に戻る
業務自動化

生成AIで業務資料作成業務を代替する

#RPA#生成AI#業務改善#As-Is To-Be#レポート作成

はじめに

「調査して結果をまとめ、PowerPointとExcelを作り、上司に連携する」という業務は、多くの職種で共通する型です。ここでは そのフローを題材に、自動化の候補を整理するうえで、どこにRPA(ルールベースの定型操作自動化)を入れ、どこに生成AI(要約・下書き・分類など)を使うか を、As-Is / To-Be の対比で示します。

本記事でいう 成果物 は次を想定しています。

成果物よくある中身上司が見るポイント
Excel比較表、試算、一覧、根拠数値、前提条件再計算可能性、一次データへのトレース、例外の扱い
PowerPoint結論、論点、根拠、リスク、次アクションメッセージの一貫性、一枚目の結論、図表の読みやすさ
連携メール本文、Teams投稿、共有リンク、版管理いつ・誰向け・何を決めてほしいかが明確か

前提として、次のような役割分担が現実的です。

観点RPAに向く生成AIに向く
入力画面操作・ファイル操作が繰り返される文章・表・ログなど非構造〜半構造データが多い
ルール手順が固定で例外が少ない表現が多様で「意味」の判断が必要
リスク画面変更で壊れやすい(メンテ前提)事実誤り・ハルシネーション(人の確認前提)
成功の鍵例外処理・ログ・再実行の設計プロンプト設計・根拠資料の添付・人による検証ゲート

以下の図では、人が最終責任を持つ承認・ファクトチェック を To-Be に明示しています。生成AIは「下書き装置」、RPAは「手を動かす装置」という位置づけです。


対象フローのAs-Is(現状)

典型的なAs-Isでは、調査・資料化・連携が 人手とコピペ でつながり、同じ作業が案件ごとに繰り返されます。

対象フローのAs-Is(情報収集 → 整理・資料化 → 連携)

対象フローのAs-Is(情報収集 → 整理・資料化 → 連携)

As-Isで起きがちな「隠れコスト」

同じ型でも、負荷は 調査対象の不確実性資料の再利用性 で大きく変わります。検討会でよく出る論点を列挙します。

  • 探索コスト:何を調べれば十分かが最初から決まっていないと、検索・問い合わせ・試行錯誤が膨らむ(この部分はRPA単体では解けにくい)。
  • 転記コスト:同じ一覧を「画面→Excel」「Excel→スライド」と何度も載せ替えるほど、ミスと版ズレが増える。
  • 合意形成コスト:上司向けの「一言」「結論の言い切り」に時間がかかるが、案件ごとにゼロから書き直している。
  • 連携コスト:正しいファイルを正しい場所に、正しい権限で渡す作業が手作業だと、後から「どれが最新?」が起きやすい。

As-Isの時間配分イメージ(例)

数字はあくまで 説明用の目安 です。実際は業界・案件で変わりますが、改善議論では「どのブロックが支配的か」を切るのに便利です。

ブロック時間の目安主な中身
収集35〜55%画面操作、ダウンロード、問い合わせ待ち、読み込み
整理(Excel)20〜35%表作成、関数、グラフ、前提の注記
資料化(PPT)15〜25%ストーリー化、図表、テンプレ合わせ
連携5〜15%命名規則、格納、送付文、版の確定

この配分が「収集偏重」なら 収集の定型化(RPA) が効きやすく、「資料化偏重」なら テンプレとたたき台(RPA+生成AI) が効きやすい、といった読み方ができます。

As-Isのつまずきポイント(例)

  • 調査ソースが分散し、同じ検索・同じ画面遷移 を毎回やり直す。
  • Excel・PowerPointへの転記で 転記ミス・版ズレ が起きる。
  • 「上司向けに一言添える」文面作りに 時間はかかるが再利用しにくい
  • 出典管理 が弱く、後から根拠を説明できない(上司質問で詰まる)。

ここでは RPA=定型UI/ファイル操作生成AI=文章化・要約・構成案 に分けて検討するのがわかりやすいです。


To-Be(改善後):RPAと生成AIの入れどころ

To-Beでは、データ取得とファイル生成の繰り返しをRPA に寄せ、調査結果の要約・スライドのたたき台・表の下書きを生成AI に寄せます。そのうえで 人が数値・固有名詞・引用元を確認 してから上司へ渡します。

To-BeにおけるRPA・生成AI・人の役割分担

To-BeにおけるRPA・生成AI・人の役割分担

To-Beのシーケンス(誰が何をするか)

「ツールを入れた結果、工程がどう並ぶか」を整理すると、次のような流れになりやすいです(※環境により前後します)。

RPA・生成AI・担当者・上司のシーケンス例

RPA・生成AI・担当者・上司のシーケンス例

配置の考え方(具体例)

ステップAs-Isでの負荷To-Beでの打ち手RPA / 生成AI
社内システムから同じ条件で一覧を取得毎回クリック連打スケジュールまたはボタン1つで取得RPA
外部サイトの公開情報を定点観測巡回とコピペ取得はRPA、変化の「意味づけ」は人+AIRPA生成AI(補助)
調査ログを読みやすくする手作業で要約たたき台を生成AI、事実は人が修正生成AI
Excelの定型レイアウトに値を入れる手入力テンプレにRPAで流し込みRPA
PowerPointの体裁・社内テンプレ適用手作業マスタにRPAで流し込み、文言はAI下書きRPA生成AI
上司への説明文・要点メール毎回ゼロから執筆構成と初稿を生成AI、トーンは人が調整生成AI
版管理・格納ルールばらつき命名・フォルダ・権限操作をRPA化RPA

ExcelとPowerPointで「効く場所」が違う

Excel は「構造が決まっているほどRPAが強い」一方、意味づけの注釈(前提、例外、読み替えルール)は生成AIの補助が効きます。

内容向く手段コメント
一覧の取り込み・整形・差分更新RPA / スクリプト列固定・フォーマット固定が前提
ピボットやグラフの更新人 / マクロ分析の意図が変わると設計が変わる
「この表を第三者が読んだときの注意書き」生成AI(下書き)ただし数値・定義は人が確定
監査に耐える出典列・根拠URL人(責任)AIに丸投げしない

PowerPoint は「型」が強いほど自動化の効果が出ます。典型パターンは次の二つです。

  1. テンプレ固定+差し替え:結論・根拠・次アクションの枠が決まっている(RPAでテキストボックス更新やファイル結合がしやすい)。
  2. ストーリーが毎回変わる:構成案は生成AI、最終メッセージは人が作る(AIは「候補を複数」出させると安全)。

生成AIを使うときの「最低限の型」(プロンプト設計の芯)

ハルシネーション対策は「禁止ではなく 工程で封じる」が現実的です。たとえば次をプロンプトに毎回含めると、下書き品質が安定しやすいです。

  • 目的:上司に何を決めてほしいか(判断依頼/情報共有/期限)
  • 読者:上司の関心(コスト、リスク、スピード、コンプライアンス等)
  • 入力の扱い:貼り付けたメモ以外の知識を使わない/推測は推測と明記する
  • 出力形式:章立て、箇条書き、1枚あたりの文字量、禁止表現
  • 検証依頼:出典が不明な主張は「要確認」として列挙させる

「調査メモそのもの」を社外クラウドに出せない場合は、社内LLM・マスキング・要約のみ投入 など、情報区分(Public/Internal/Confidential)に合わせた使い分けが必要です(次節)。

RPAだけ・生成AIだけに寄せない方がよい典型

状況片方だけに寄せると起きること望ましい組み合わせ
画面が頻繁に変わるRPAが壊れ続ける取得方法をAPI/エクスポートに寄せる、範囲を狭める
数値の正確さが最優先生成AIが誤るAIは「文章」だけ、数値はソースオブトゥルースへ
監査ログが必要人手が残らないRPAの実行ログ、ファイルのハッシュ、承認履歴を設計

セキュリティ・ガバナンス(導入前に並べるチェック)

「便利さ」と「情報漏えいリスク」はトレードオフになりやすいので、To-Be設計では先に並べます。

区分生成AIRPA
公開情報のみプレス、官報、公開統計外部サービス利用も検討しやすい画面取得でもリスク低め
社内限定未公開数値、顧客名、社員情報社内ゲートウェイ/オンプレ/マスキング必須実行アカウント権限の最小化、ログ保管
個人情報・機密契約書、ID情報原則NGまたは匿名化後のみ画面キャプチャの保存先を厳格化

加えて、生成AIの出力をそのまま上司提出 しない、RPAの実行結果をサンプル検証 する、といった 人のゲート をTo-Beに書き込むのがポイントです。


導入の進め方(As-Is計測 → パイロット → 横展開)

いきなり全工程を自動化せず、次の順で進めると失敗しにくいです。

  1. As-Isの事実収集:1案件を追い、画面録画・作業ログ・所要時間を取る(どこが支配的かを確定)。
  2. 自動化の候補を2系統に分ける:①RPA向き(定型操作)②生成AI向き(文章・構成)。混ざる場合は分割する。
  3. パイロット:週次・月次など「頻度が高い」案件を1つ選び、例外処理の扱い(失敗時の通知先、再実行)まで含める。
  4. 運用設計:担当交代、テンプレ更新、画面改修時の保守責任、セキュリティレビューのタイミング。
  5. 横展開:テンプレとプロンプトを資産化し、案件間で再利用する。

導入の進め方(As-Is計測から横展開まで)

導入の進め方(As-Is計測から横展開まで)


KPIの置き方(Before / After)

「何が改善したか」を上司やステークホルダーに示すために、次のような指標が扱いやすいです。

指標カテゴリメモ
時間リードタイム(着手〜送付)、工程別分位(中央値)短縮だけでなく、品質(手戻り)も見る
品質転記ミス件数、上司からの差し戻し回数To-Beの真の価値が出やすい
再現性テンプレ準拠率、命名規則違反RPAの効果が表に出る
リスクインシデント件数、越権アクセス未遂セキュリティとセット

失敗パターンと対策(よある落とし穴)

失敗パターン症状対策の方向性
AIに丸投げ数値・法令・固有名詞が誤るファクトチェック専用のチェックリストを工程化
RPAの密結合画面改修のたびに修理が必要オブジェクトセレクタ見直し、安定UIへの誘導、範囲縮小
責任境界が曖昧障害時に誰が直すか不明運用オーナー、保守SLA、ログの見方を文書化
テンプレなき自動化生成物のばらつきが増える先にテンプレと「禁止事項」を固める
機密データの誤投入コンプラ事故データ分類、マスキング、社内LLM、入力前の確認

As-Is / To-Be を1枚に畳んだ比較図

As-IsとTo-Beの対比(1枚図)

As-IsとTo-Beの対比(1枚図)


RACIの例(責任の置き方)

自動化しても 責任は人に残る ので、最低限のRACIを例示します(組織に合わせて調整してください)。

活動担当者RPA/AI運用上司
調査範囲・前提の確定A/RCI
収集の実行(自動含む)RAI
要約・資料たたき台RCI
ファクトチェック・最終編集A/RII
提出・説明RIA

R:実行 A:説明責任 C:相談 I:報告


まとめ

  • RPA は「同じ手順で、同じ画面・ファイル操作を何度もする」部分に効きやすい。調査結果の 取得・フォルダ格納・テンプレへの流し込み・連携操作 が代表例です。
  • 生成AI要約・構成・スライド/説明文のたたき台 に効きやすい一方、正確性の最終責任は人 に置くのが安全です。
  • To-Beでは 「RPAで手を減らし、生成AIで頭のスタートを早くし、人で信用を担保する」 という三段が、上司連携のレポート業務ではバランスが取りやすいです。
  • Excelは構造化・差分更新PowerPointは型固定の差し替え にRPAを寄せ、ストーリーと文章 は生成AIの下書き+人の校正、という切り分けが実務的です。
  • セキュリティ区分・ログ・運用オーナー・KPI をセットで決めないと、ツール導入が「個人の工夫」で止まりやすいです。

業務の実態(対象システム、セキュリティポリシー、既存のテンプレ有無)によって最適解は変わるため、本記事は 検討のたたき台 として利用し、パイロット範囲と人の確認ゲートをセットで設計することをおすすめします。